เข้าสู่ระบบ第 百二十七話 暗闇の暗号「わかりました。 では、引手茶屋にご案内しましょう……」 梅乃が手を叩くと小夜が近づいてくる。「はい……」 小夜が頭を下げる。 この世界は遣り手の席の者が高い立場にあって、呼ばれた者は頭を下げて指示を待つことになっている。「……」 梅乃は黙って小夜を見る。 数秒が経った後「一花いるー?」 梅乃が声を上げると、一花が走ってくる。「……梅乃?」 小夜は、またもや呆然としてしまう。千に突き飛ばされ、古峰にも突き飛ばされる。 最後には梅乃にまでスルーされてしまったのだ。何も知らない小夜の目に涙が滲む。(何よ…… 私は加わってはいけないの? もしかして私が犯人扱いされているの?)小夜が悔しそうな顔をして外に飛び出していく。 客は小夜を気にしてか、何度も外を見ていた。「一花、お客様を千堂屋まで案内してくれる?」「わかりました」 客は八千代と一花を連れて引手茶屋に向かった。客が戻ってくると 「お二階へどうぞ。 酒宴で宜しいでしょうか?」 梅乃が訊くと 「そうね…… そんなに高い物じゃなくていいわ」 これに八千代が答えていく。(馴染みか…… 私が遣り手の席に多く座っていた頃は来ていない…… 最近の客か……) 梅乃は静かに帳簿を開いていく。
第 百二十六話 情報戦「これは幕府公認だった吉原に対する宣戦布告のようなものだ!」 ある妓楼主が大声を出す。この会議には大見世と中見世、小見世からも香梅楼の洋蘭が参加していた。「おそらく深川の遊郭なんだろう…… 東京府で大きな花街は二つだからな」 明治十一年 一月。 西南戦争が終結して半年が経つ頃である。政府は自由な商売を推進。 吉原だけが特別だった風潮を一新するようにしていた。その中で、深川の花街が頭角を現していく。 また、幕府に禁止されていた銭湯の二階などで行為をする『湯女』なども復活してしまった。湯女は女郎とは違い、銭湯の番台に座る看板娘が夜になると客を二階に誘う。三味線や小唄を唄い、娯楽的に集まる男性を客にしている。 場代が掛からない為、安価で楽しめることが庶民から支持を得ていた。「このままじゃ、代々続いてきた吉原という看板に泥を塗ってしまう。 何か良い案はないものか……」大見世や中見世は江戸時代から続く見世であり、内装こそ洋風に変わったりもしたが風習などは江戸時代から続く見世ばかりだ。 短期間で成長した小松屋くらいが知らないだけである。「すみません…… 小松屋《うち》は新参者ですが、この吉原という町が日本一だと思っております。 同じように吉原を守るのが務めだと思っております……」小松屋の主《あるじ》 小松崎が力強い言葉を掛ける。そんな中、黙ったまま話を聞いて
第 百二十五話 二人羽織 初陣で客の指名を受けた古峰が宴席に入ると 「待ってたよ、古峰ちゃん……」 客は嬉しそうな顔をしている。 「は 初めてなので緊張しますが、よ よろしくお願いいたします……」 古峰は膝をつけ、しっかりと頭を下げる。 「しっかり者だよね。 さすが禿たちの長女だな」 客が満足そうに酒を口にするが (すみません、三女なんです……) そう言いたかけたが、言葉を飲み込んでいく。 古峰は背も高く、冷静な行動をする。 実に姉らしいのだが (一番、背が低いのがお姉ちゃんなんです……) これも言いたいが我慢する。 「失礼しんす…… お酒と料理を運んでまいりました」 襖がスッと開く。 運んできたのは小夜だった。 「おやおや、君も若くて素敵だね」 客が小夜を誉めると (若ければいいのか……) 古峰は男というものを知ってしまったような顔になる。 客が酒を飲むと小夜が注ぐ。 古峰は静かに琴の演奏を始めた。 宴席が盛り上がっていくと 「そろそろ会計も終わりかな……?」 采は苦労しながら立ち上がる。 その脇から梅乃が支え、部屋に連れて行ってもらうようになっていた。 采は段々と足が弱くなっていたのだ。 梅乃は、采の寝所でマッサージ
第 百二十四話 こぼれ噺《ばなし》 「お~い~ら~ん……」 梅乃は第二子の具合を診に玉芳の家まで来ていた。 “ポカンッ――” 勢いよく出てきた玉芳が梅乃の頭を叩く。 「お前な…… 引退してから何年が経っていると思っているんだ! 近所の人だって、知らない人も多いんだ。 それなのにデカい声で……」 玉芳が追撃のゲンコツを落とす。 「すみません……」 シュンとする梅乃。 すると、玄関から大江が出てくる。「これ、お医者様になんてことを……」 「大江様、お久しぶりです」 梅乃がニカッと笑うと、大江も笑顔になり 「しかし、梅乃ちゃんは立派になったね~。 まさか、お医者様になるなんてな~」 「いえ、赤岩先生や岡田先生がいたからです」 「それと、采さんだろ?」 大江も三原屋の常連だったので、中の事情を知っていた。 梅乃は大江の家に入り、赤子の診察を始める。 「熱はないみたいですね。 これなら安心ですが……」 梅乃がチラッと玉芳を見る。 「何よ? どうしたの?」 玉芳が訊くと 「名前、教えてください」 梅乃が微笑むと 「名前? 今更?」 「へっ? 今更? 私は知りませんが……」 梅乃がポカンとすると
第 百二十三話 友情明治十年、大晦日。 年末を吉原で過ごしたいと思う人は少ない。 早めに用事を済ませて自宅に戻っていく客が多い。吉原に通える男性は東京の人口でも僅かである。 多くの客は妻帯者であり、会社を経営しているくらいの身分でなければ吉原通いは続かない。明治になり、小見世でも安いと思える見世は少なくなってきたことで売り上げはピークから半分程度になっていた。人気を誇っている三原屋、鳳仙楼、小松屋は安定しているが、売り上げが少し落ちてきた妓楼があった。長岡屋である。 長岡屋は喜久乃が花魁だった頃がピークであり、数日間だけの花魁を襲名した喜久陽が亡くなってからは人気が下がってしまった。「やはり、梅毒がな……」 長岡屋では、主人がため息をつく時間が増えていた。「梅毒なんて、どこでもなったじゃない。 三原屋だって鳳仙楼だって同じだったわよ」 主人と話すのが遣り手である。 長岡屋の主人は、女房を遣り手に据えている。 これは、どこの見世でも同じであった。「どうにか巻き返せないものか……」 主人が悩んでいる横を静《しず》が通る。 静は近江屋の禿であったが、近江屋の閉鎖に伴い長岡屋で拾ってもらった禿である。 喜久乃の傍で勉強し、時間こそ掛かったが十六歳で新造となっていた。「父様、母様…… ため息は早いです。 私も十六歳になりました。 これから孝行していきますので」 静がニコッと笑うと「お前は、苦しい時もあったのに、よく我慢してくれたな…&he
第 百二十二話 誕生 明治十年 十二月。 年末になり、吉原の活気が出て来た。 「おはよう……」 一花と二葉が外の掃き掃除をしていると、梅乃が外に出てくる。 「おはようございます」 禿の二人も元気よく挨拶をする。 「どれ、貸して」 梅乃が手を出しホウキを受け取ると 「梅乃姐さん、お医者様にそんなこと……」 二葉が焦っている。 「いいって。 私だって、少し前までは掃除していたんだから」 梅乃がニコニコしていると 「そうよ! 掃除していても、ホウキを置きっぱなしにして何処かに行ってしまったりね」 「小夜姐さん……」 中からクスクスと笑いながら出て来たのは小夜である。 「小夜…… おはよう」 梅乃がニコッとすると、 「なんで梅乃が掃除しているのよ?」 小夜はキョトンとする。 「そりゃ、妓女でもない私が掃除したって変じゃないでしょ? 潤さんだって掃除するし……」 「何を言っているのよ! 梅乃は医者なのよ。 赤岩先生だって、岡田先生だってしなかったじゃない」 小夜が言うと、梅乃は考え込む。 (そういえば先生達は掃除しなかったかも……) 考えても答えが出てこなかったので 「まぁ、私の趣味ってことにしておいて」 梅乃が微笑むと、小夜は 「好きにしたらいいよ。 三原屋《ここ》に居るだけでお婆や
第十話 月下の涙 昼見世の時間、菖蒲は張りから外を眺めていた。 そして、誰かが通れば笑顔を振りまくが苦戦をしている。 「はぁ……」 菖蒲はため息をついていた。 「菖蒲姐さん……」 張り部屋の外から梅乃が声を掛ける。 「なんだい? 今は昼見世の時間。 何の用だい?」 「はい。 コレを持ってきました」 梅乃は、張り部屋の戸を少し開けて紙を中に差し出す。 「んっ? 何これ……ぷっ」 菖蒲が紙を見て吹き出した。 その紙は、梅乃が書いた菖蒲の似顔絵であった。 「なんだい? もう少し、上手に描きなさいな……」 菖蒲は笑っていた。 「へへへ……姐さんの笑顔が見たくて描きました」 梅
第九話 母の声五月、桜の花が全て葉に変わった頃、一人の妓女が吉原から出ていく。長年、三原屋のトップに君臨していた玉芳が身請けされるのだ。「本当に、この時が来るなんてね……」 采が涙ぐみ、話す。「今まで、本当にありがとう……母様《ははさま》」 そう言って、玉芳が采に抱き着いた。三原屋は、とてもファミリー感覚な妓楼である。「父様《ととさま》も、本当にお世話になりました」 ここでも玉芳が文衛門に抱き着いた。一階の大部屋では、祝賀ムードになっていた。妓楼の見世先には大量の花が届き、幕《まく》まで出していた。「おや、梅乃は?」 玉芳がキョロキョロして梅乃を探していた。「こんな
第八話 覚悟の時「えっ? こんな昼間に共ですか?」 梅乃と小夜が驚く。「そう。 勉強をしましょう」 玉芳は、そう言って出かける準備を始めた。そして向かった先は、仲の町にある瓦版《かわらばん》であった。「ごらんなさい。 ここに沢山の記事があるでしょ! ここから文字や出来事を頭に入れなさい」 梅乃と小夜は、瓦版を覗き込んだ。「これは何て書いてあるんですか?」 小夜が玉芳に聞くと、「これは、法度。 禁じられてる事を言うのよ」 玉芳は丁寧《ていねい》に教えていた。そこに鳳仙が現れた。「おや? 玉芳花魁、今日は昼間からどうしました?」「あぁ、鳳仙か……この娘たちの勉強さ。 妓楼
第七話 禿「会いたかった……」 近江屋の禿は、小夜の手を握っていた。「あ、ありがと……私、小夜。 あなたは?」「私、静(しず)。 よろしくね」 笑顔の二人に、梅乃がヒョコッと顔を出す。「小夜~♪ お友達?」「うん。 静って、近江屋の禿なんだって」 小夜は上機嫌であった。内気な性格で、梅乃しか友達が出来なかった小夜が、自力で友達を作ってきたのだ。「良かった♪ 私、梅乃。 よろしくね♪」こうして三人の禿は仲良くなっていった。時間が空いた時は、よく三人で話しをする仲になっていった。「そういえば、この前の妓女の事なんだけど……」 小夜がお歯黒ドブで亡くなっていた妓女の話を切